見学させていただいて

 今回、伊賀先生にお願いをして、伊賀先生の元で勉強させていただきました。

 

私の目標としては、正しい所見の取り方を学ぶ事。また、一流の先生達の診察を見て自身の診療に限界を作らないようにする事でした。

 

 まず先生にご指摘されて気づいた事は、所見を一つ一つ確実にチェックしていく必要がある事です。T音が亢進していないか、U音が分裂しているか、gallopの有無、その他の過剰音の有無、収縮期雑音、拡張期雑音の有無、収縮期雑音があるなら両頚部や腋窩への放散の有無です。頭では分かっていたはずでも、先生にご指摘された事で全然出来ていなかった事を認識させられました。

 更に、自分の中で一つ一つの言葉の定義が曖昧である事も認識させられました。言葉の定義を言えないという事は、分かっていないのですから、基本的な事から一つ一つしっかり明確に理解していかないといけないと感じました。

 診療所での診療を見させていただいて、先生が家族構成等を含めた患者背景、死に対しての患者さんの考え方、解釈モデルを重んじているという事を感じました。特に患者さんの希望をしっかり聞く事は、医者は医学的情報を与えるが決定は患者さんがする、という当たり前なようで当たり前になっていない現在の医療に対する先生の想いがあるのではないかと思いました。

 そして、伊賀先生が兵庫医科大学に講義に行かれているのに同伴させていただきました。ボランティアで教育を続けていらっしゃる伊賀先生には頭が下がる思いです。私自身、日本の医学教育に対して疑問を抱いておりますが。このような先生方は大変ありがたいし、もっとそういった先生に報いがあっていい世の中なのではないかと思います。そうしなければ下が育たないのではないでしょうか。講義の中で印象的だったのは非常に検査前確率すなわち問診・身体所見を重要視されていたことです。私は声を上げて”agreeですと言いたい気持ちです。研修医の教育に関しても多くの病院では、精密検査に偏りがありすぎるのではないでしょうか。研修医時代に学ぶ事は、将来自分の非専門分野になる疾患でも疑い、危険ならコンサルトを判断する能力を身につける事。その必要性を伊賀先生が伝えてくださろうとしていらっしゃったのではないかと思います。ただ、大学病院で実習している学生さん達にはなかなか肌で感じ取りにくい所も現在の日本医学教育の問題なのかもしれません。

 事前の目標に対して目標は果たせたと思っております。もちろん一日で全ての所見を正確に取れるようになる事は無理ですが、これからは今回習った所見の取り方で、意識を持って診察をしていこうと思います。

 

(まとめ)

 所見を一つ一つチェックする事

 言葉の定義を明確にする事

 患者背景、死に対しての考え方、解釈モデルを主治医としてきくこと

 検査前確率(問診・身体所見)を上げるスキルを研修医時代に学べ

 

 今回、お忙しい中このような貴重な機会をいただきまして、伊賀先生、伊賀内科スタッフの方々、診察させてくださった患者様、大変ありがとうございました。伊賀先生にはわざわざ私のために、患者さんに来院するよう頼んでくださり感謝の言葉もありません。教えてくださる先生、患者さん、次世代のドクターのためにも、自分もしっかり勉強し後輩に何かを残していけるような人間になりたいと思います。

 

私からのコメント:洞調律+完全房室ブロックでVVI挿入の患者さんのS1が動くこと、S2がparadoxical splitをわかってもらえました。きっちりと診察すると、こんなことがわかると実感してもらうことが、診察を大切に思うmotivationになるのだろうと思っています。

学生さんや、来年の研修医にもきちんとしたことを教えてあげてください。    2009-7-29